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深江で大規模に米・麦・大豆を作っている若く活力のある農家、松崎治久さん。家族・従業員さんと一体となって、明るくかつ真剣に農業に取り組んでおられます。治久さんの発想力とそれを実行に移す行動力、そして常に新しいことに挑戦し続ける姿に、地域の食を支える農家としての素晴らしさを感じました。“百年続く笑いのある農業”を目指す「百笑屋」としての治久さんのチャレンジ精神には、これからの二丈を支えるパワーとなっていくと思います。

PART1

他の友達ができんことができるという、ちょっとした優越感

学生:治久さんは、いつごろから農家になろうと思っていたのですか?

 

松崎:小学校5年生です。

 

学生:早いですね!小学生のころからお手伝いなどをしておられたのですか?

 

松崎:そうね。小学5年生でトラクターに乗り始めて、楽しいって思った。それで、小6くらいから2トントラックに乗り始めて…(笑)それを覚えて、父ちゃんの手伝いをするのが楽しかった。手伝いが楽しいというより、車に乗れるのが楽しいみたいな。

 

学生:そんなに小さいころから!機械を操作(そうさ)するのが好きだったのですか?

 

松崎:そうそう。ユンボ(※)に乗ったのは保育園のときかな。一人で乗れるようになったのが小2くらい。他の友達ができんことができてるという、ちょっとした優越感。そういうのが楽しかった。まぁ、他人に迷惑をかけないくらいの無茶なことは、父ちゃんはさせる人やったけん。

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↑ユンボを操作する治久さん
※ユンボ:一般には油圧ショベル、パワーショベル、バックホー等と呼ばれる建設機械の呼称のひとつである)

学生:お手伝いとかは、学校の放課後にしていたのですか?

 

松崎:そうそう。一番嫌やったのは、友達と遊ぶ約束をしていて、帰ってきて「仕事手伝え」と言われたら辛かった。「ごめん、遊べんくなった」って友達に言うのが。

 

学生:たしかに、それは少し辛いですね…。中学生のころは、どんな農家になりたいとか考えていましたか?

 

松崎:あったね。今からすると完全に未来予想図だと思うけど、家の近くに2,30mの管制塔(かんせいとう)みたいなのがあって、ボタンを押したら機械が勝手に動いて耕(たがや)してくれる…みたいなのを想像してた。(笑)

 

学生:わぁ、それだけ機械が好きだったということですね!

 

松崎:でも、今は真逆のことを考えよる。「手をもっとかけてやりたい」って。機械のみではできないところが農業にはあるんよね。足を運ぶ、手をかける、そうすることが多い方がいいなと。

 

学生:なるほど。農業高校ではどのようなこと学ばれていたのですか?

 

松崎:高校では、機械の基礎みたいなことを習った。賞状をもらったっちゃけど…。農業高校の甲子園(こうしえん)と言われている、鑑定競技(かんていきょうぎ)っていうのに全員出場しないといけなくて、全国大会まであるとよ。それの「農業鑑定競技農業機械コース」で賞状をもらいました!

学生:へぇ~!すごいですね!!治久さんの機械好きなところはそこにもつながっていたのですね。高校卒業後は、福岡県農業大学校に進まれていますが、大学ではどういったことを学ばれましたか?

 

松崎:大学では、植物の生態とかをより深く習ってた。

 

学生:植物の生態…農業に関連しそうでうね。それは今でも役に立っていますか?

 

松崎:まぁ大事なこと習っとったけん、農大のときの教科書はいまだに休けいする場所に置いとって。わからんときにパッと見れるようにしてる。そのとき勉強しとけばよかったんだろうけど…、しながらじゃないとわからんことばかりで。書いてある文章を読んでるだけじゃわからんけど、実際田んぼでイネがこんな状態やけん、あーこういうことねって読解できたりする。しながらやったらもっと身に付くな~っていう感覚でした。

 

学生:大学では農業の研修があったとお聞きしましたが、どのような研修なのですか?

 

 

松崎:「先進農家研修」といって、農大で必修であった1か月間の研修のこと。おれはその研修で宗像に行きました。一人で、初めて会う農家さんのところに住み込みで。よそに泊まり込みで勉強するって、自分磨(みが)きになるし、自分の家族のいいところにも改めて気づくよ。

 

学生:泊まり込みの体験から、実際にどのようなことを学ばれましたか?

 

松崎:うちよりも小規模な農家やったけん、棚田(たなだ)の水を引っ張ってくる方法だったり、出入口の作り方とかを学んだ。あと、田んぼを何十枚も作ってる人は、1枚くらいだめになっても「しゃあないね」ってなるけど、少ししか作ってない人は1枚1枚により思いをかけているんよね。思い入れに差があるっていうか。だから、思いの勉強はしてきたかな…。

 

学生:治久さんの持っておられる田んぼってとても広いですけど、昔から多かったのですか?

 

松崎:所有地は550ha(ヘクタール)くらいよ。(※1ha=10000m2)

 

学生:全体の3分の1ですか?

 

松崎:あとは借地(しゃくち)で、人から借りている。これも人気商売っちゃん。草をちゃんと刈(か)る人、田んぼの中に草を生やさない人。そして病気が出ない、仕事がきれい、常にベストを尽(つ)くす、とかね。手を抜こうと思えば抜けるっちゃけど、そこを抜かずに、一生懸命してたら増えました。

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