深江で大規模に米・麦・大豆を作っている若く活力のある農家、松崎治久さん。家族・従業員さんと一体となって、明るくかつ真剣に農業に取り組んでおられます。治久さんの発想力とそれを実行に移す行動力、そして常に新しいことに挑戦し続ける姿に、地域の食を支える農家としての素晴らしさを感じました。“百年続く笑いのある農業”を目指す「百笑屋」としての治久さんのチャレンジ精神には、これからの二丈を支えるパワーとなっていくと思います。
PART2
百年続く笑いのある農業を
学生:無農薬は治久さんが農業を始める前からやっていたのですか?
松崎:ばあちゃんとじいちゃんでミカンの消毒をしに行ったら、ばあちゃんが具合悪くなって倒れたっちゃんね。で、病院に行ったら農薬が原因って言われて…。それで、父ちゃんが減農薬に走り出した。
学生:そうなのですね。治久さん自身も農薬を使わない方向でこれからもやっていくつもりなのですか?
松崎:そういうこともあったから、農薬を使わない方がいいなってずっと思っていて。子どもが生まれてからは、「わが子に食べさせたいもの」っていうのが栽培(さいばい)基準の最高グレードじゃないかなって思うようになって…。ほとんど農薬を使わずに今はやってます。
学生:お子さんが食べて何かがあったっていうわけではなくて?
松崎:子どもが田んぼにおやつを持ってきた時に、大豆の葉っぱや泥(どろ)を食べたりするんよね。そのときに「農薬使ってなくてよかった~」ってなったよね!
学生:お子さんに自然の中で自由にさせてあげれるっていいですね!治久さんが作っているミルキークイーンなどのお米は無農薬なので、他のお米に比べると少し高いのですか?
松崎:そうね。少し贅沢(ぜいたく)をすれば手が届くという価格(かかく)設定でやってます。百笑屋のコンセプトを分かってもらえる人に食べてもらいたいと思ってる。
学生:なるほど。農業をするときに心がけていることはありますか?
松崎:心がけてるのは、まわりの人を笑わせることができたらいいなって思ってる。きついときほど、面白いことをしようって思う。従業員さんの前とかでね…
学生:「百笑屋」もそんな意味で?
松崎:そうやね。社訓っていうのを考えたっちゃん。9月になってできたやつ。その中の一つがこれ。“「協力」:百年続く農業目指して、笑いのある農業を営み、みな一つ屋根の下家族同様支え合う。”この「百年続く」で百笑屋よ。あとは、父ちゃんが、笑いながら百姓したいなって言ってるのもあって。
学生:「100年続く」農業っていいですね!!治久さんのところは、代々兄弟の誰かが継いでいくというかたちで続いてきたのですか?
松崎:そうです。おれが父ちゃんに言われていたのは、兄弟3人の中で一番勉強ができる奴に後を継(つ)がせると言われていたっちゃん。だから勉強は絶対に負けらないと思って頑張った。まぁ、かろうじておれが勝ち取ったみたいな感じで…。(笑)
学生:治久さんも、お子さんのうち1人だけに継がせようと思っておられるのですか?
松崎:う~ん、そうね~。最近までは、おれの農業継がせるのは1人だけって考えよったんよ。じゃないと、長男と次男どっちにしようかな~迷って、俺から教えるのが弱くなったり、おれ自身の身が入らんくなったりするかなと思って。それに、「別に勉強せんでも後継げるし」みたいに子どもに思われる。おれは、それは違うなーと思うんよね。そんな感じで、1人だけに継がせると考えてたんやけど、今は1人ってしなくてもいいと思ってる。
学生:1人じゃなくても良いと思うのはなぜなのですか?
松崎:耕作放棄地(こうさくほうきち)が増えてきました、うちのお米のニーズが上がってきました、お米が足りてません…ってなったら、2人で都合よく分担できるならそれでもいいかな~って。そのかわりより鍛(きた)え上げるよという感じではあるっちゃけどね。甘やかしたりっていうことはせず。
学生:なるほど。治久さんは、子どものころから継ぎたいっていう気持ちがあったのですか?
松崎:父ちゃんから直接言われたことはないっちゃけど、じいちゃんに「お前が継ぐとぜ」と言われていた。