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糸島市深江にあるミツルしょうゆ醸造元(じょうぞうもと)は、しょうゆの製造と販売を行う地元のしょうゆ屋さん。城慶典(じょうよしのり)さんは高校時代に「自社でしょうゆ仕込みを復活させる」という夢を抱(いだ)き、東京の大学に進学。複数のしょうゆ蔵で研修を積みながら、しょうゆづくりについて学びました。そして2013年、自社では40年ぶりに一から作り上げたしょうゆ「生成り(きなり)」が完成。しょうゆ業界でも珍(めずら)しい自社仕込みのしょうゆは、全国的にも注目を集めています。

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しょうゆ仕込みを復活させたい。目標を見つけた学生時代。

学生:実家がしょうゆ屋さんで、そのしょうゆ屋を継ぐかたちで今のお仕事をしていると思うんですけど、中学生や高校生のときもしょうゆ屋の手伝いとかをしていたんですか?

 

:そうだね、夏休みとかね、配達とか。でも火入れをしたりとか、そういうしょうゆ蔵の仕事はしてなかったかな。配達したり、鍋(なべ)を洗ったり…

 

学生:あ、そうなんですね。でも、その実家のしょうゆ屋で、しょうゆ仕込みを復活させたい、っていう想いをもったんですよね。それはいつごろだったんですか?

 

:高校2年生くらい。職場体験でしょうゆ組合に行ったとき。実際につくりよるとこを見てみたいって思って。行ったところはめちゃくちゃでかい工場やったけんね。それで、うちでも一からしょうゆをつくるのをやりたいなと思ったわけで。

 

学生:なるほど。

 

:しょうゆ屋のことは、子どものときから嫌でもなかったし、なんとなくやるものだと思ってたからね。ただそうね、それまでは何がしたいとかはなかったけど、職場体験をきっかけに、こういうのがしたいなっていう目標ができた感じだね。

 

学生:それでも、他の選択肢もあったとは思うんですが。普通に就職してサラリーマンになるとか。

 

:何か他にやりたいことがあったらだけど、逆に言うと、そういうのもなかったし、農家に生まれた人が将来農家をやるんだろうなって思うのと同じような感覚だよね。

学生:でも慶典さんは、高校卒業後そのまま実家を継ぐんじゃなくて、一度東京の大学に行ってますよね。大学に行こうと思ったのはどうしてなんですか?

 

:しょうゆを一からつくるのを実家ではずっとやってなかったけん、発酵(はっこう)とか醸造(じょうぞう)とか、しょうゆづくりに必要なことを勉強したいっていう気持ちがあって。家でやってないから家の人から教わることもできないし、だったら外で学ばないと。

 

学生:それで、糸島農業高校から東京農業大学に進学した、と。

 

:うちの高校から進学する人は少ないけど、大学行けるなら行きたいって思ったのもあるし、しかも東京行けるなら行きたいって思ったのもあるし。

 

学生:ええと、大学の専攻は醸造科(じょうぞうか)に進んでいますけど、醸造科ってどういうことを勉強するんですか?

 

:なんか、基本的に最初のほうは、生物とか化学とか、そういう理科よね。それで、2年生とか3年生とかになったら、もうちょっと細かいカテゴリに分かれてね。ビール学、しょうゆ学とか。味噌(みそ)もあったね。麹(こうじ)、日本酒、ワインとかも。

 

学生:おお、ビール学とかあるんですね!学んでみてどうでしたか?イメージ通りでした?

 

:そうね、どんなイメージを持っていたかは覚えてないけど。まあ、ビール学とか言われても、行程(こうてい)とかは覚えているけど作れる技術はないし。やっぱり、目的や意識を持って自分で勉強せんとね、自分のものにはできんなって思うね。

 

学生:なるほど、たしかに、自分から学ばないと何も残りませんよね。大学生活全般はどうでしたか?

 

:大学生活?それはやっぱ楽しかったよね。大学では一人暮らしだったし、今まで自分が育ったところじゃない場所で生活するし、全国からいろんな人が来てるし。全部が新しい経験というか、そういうのが楽しかったよ。

 

学生:ちゃんと勉強はしてましたか?(笑)

 

:勉強は全然してなかったよね(笑)。でも毎日退屈もしてなかったね。自分の学部以外にも、いろんな友達をいっぱい作ろうって意識していたから。人をどんどん知れば人脈が広がっていくし、いろんな情報も入ってくるし、楽しいなって。

 

学生:そんなふうに、大学に入ってからいろんな経験をされたと思うんですけど、しょうゆ屋を継ぐことを迷ったりとか、もしくは他のことをやりたくなったりとか、そういうことはなかったんですか?

 

:あ、いや、それはなかったね。もう目標は決まってたからね、しょうゆを仕込みからまた作るっていう。それをやるために今、何をしとかないかんかな、って考えてたから。

 

学生:すごい。本当にしょうゆ一筋(ひとすじ)なんですね!

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