今日は二丈深江で洋食屋を営む内野一郎(うちの いちろう)さんに、ご自身のお仕事と地元で働く理由を伺いました。厳しい下積み(修行)時代を経て自分のお店を始めた内野さん。料理へのこだわりから経営者としての悩みまで、余すところなく話していただきました。
PART3
『好きなことができる』自営業のやりがいと苦労
学生:内野さんにとって、仕事のやりがいはどういう時に感じられるんですか?
内野:自分の場合は自営業なんで、責任は全部自分にあるんですけど、逆に言えば好きなことができる、自分の思うようにできるのが一番のやりがいですね。そのぶん、いろんなことが、お金のことだったり、集客のことだったり、料理のことだったり、常に、悩みがありますね。
学生:当然、苦労もあったでしょう。
内野:苦労、、そんな苦労はないんですけど、覚悟の上でやっているので。でもあえて言うなら、常に先に長くつづけていけるかなあ、という不安がある、これが消えないですね、商売は。約束されてないですからね、ずっと安定してやっていけるというのが(笑)。
学生:あと、ウッチーノ食堂が料理で他のところと負けていない、独自性といったところは?
内野:既製品(他の業者さんが作った食品)は使わないことです。なるべく手を掛けて提供するのがモットーですね。例えば、メニューにあるスープ。粉末だしをといて少し具を加えて出すことはしません。食材を炒めて、煮込んで、場合によっては漉(こ)したりと手間をかけるようにしています。仕事をしたっていうのをしないと。
学生:その信念みたいなのは、どこから来ているんですか?
内野:何でしょうね。きっかけは何っていうわけでもなく、この仕事やっているうちに、そういう風な信念になったっていうか。提供する料理によっては、赤字覚悟のものもあります。なかなか、思うようにいかないですよ。だから、それを少しでも分かってもらえたようなリアクションがお客さんからあった時は、嬉しいですね。
『関東に出たかった』中学時代の気持ちは、なぜ変わったか
学生:糸島を中学生時代に出たいとかありました?
内野:ありましたね。中学の時は。高校から大学になる時に、関東に出たかったんですけど、結局受からず(笑)。で、唯(ゆい)一受かった福岡の大学に行きました。糸島を出たかったですね。
学生:出たいと思ったのはなんででしょうね。
内野:田舎くさいのが嫌だったんですね、中学校ぐらいから。なんかもう、変わってるのかもしれませんけど(笑)。だから、高校で福岡市に通学してたころは、環境が全然田舎の中学校と違うから、そこでまた考え方も変わったのかなあ、と。一回一回ちょっとずつ外に出てみたら、あ、こんなもんか。関東も行ってしまえば、ああこんなもんか、と。でやっぱり地元がいいなあ、と。
学生:地元がいいなあ、と思ったわけは?
内野:そうですね、やっぱり生まれたところが一番ですね。慣れ親しんだところというか。みんな、まわりに山があったり海があったりとか当たり前と思ってるんですよ。あと、地元の人との関係が深いから、僕は好きなんですね。都会的な人とかで嫌いな人もいると思うんですけど、自分は生(しょう)に合ってると思います。いろいろな行事が結構ありますし、神事だったり、お祭りだったり。皆で協力してっていうのを、すごく感じますね。
学生:なるほど。今日はお話しを聞かせて頂き、ありがとうございました。